二十歳

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作家 伊集院静氏の著書の中に「二十歳の空はどこにでも飛んでいける。信じるものにむかって飛び出そう。空は快晴だけじゃない。こころまで濡らす雨の日も、うつむき歩く風の日も、雪の日だってある。実はそのつらく苦しい日々が君を強くするんだ。苦境から逃げるな。自分とむき合え。強い精神を培え。そこに人間の真価はある」という一節がある。

私はこの言葉を目にした時、美術家にとっての二十歳というのか、大人(美術家)の仲間入りの条件について考えてみた。その昔、昭和の頃だったら何かの公募展で賞に入るか、所属の公募団体で認められた時など、いわゆる有力者たちのお墨付きが必要だった。なぜなら当時の美術界の格付けは、ほとんど国内の評価だったため、このような形式が合理的だったのだろう。ところが平成直後のバブル景気を突破口に、海外との交流が盛んになったことで、鎖国(内向き)状態からオープンなものに変化していく。さらに、その後にネット社会が一般化したことで、自己発信できることでメジャーに属さず、独立性の高い状態で活動できるようになる。そのおかげであらゆる価値観が混在し、基準となる条件は単純ではなくなり、多様な視点から判断するものになったと言えよう。

とはいうものの、美術界の価値観は常に変化していく。これからもずっと変わり続けるし、それは古くから当たり前のことなのである。つまり、道なき道を切り拓いてこそ美術家だ。どこまでも自分らしい道にこだわり、例え遠回りになっても怯まず生きる。たったひとり信念を貫いて、既成の枠から飛び出して、新しい世界へ冒険してみよう。そんなタフな精神力を覚悟できれば美術家への仲間入り。あとはひたすら創意工夫して、負けずにやり続けるだけだ!