人生観

f:id:gallerynakano:20200722231056j:plain

私は以前から美術家というのは、哲学を持っていた方がいいと考えている。ただし、いわゆる哲学者が唱えるような専門性の高いもののことではない。単純明快に言い表すとしたら、大きな夢のある人生観を持って欲しいということ。自分らしい作品を制作しようとすれば、あらゆる機会にぶれずにやり続けるための、核になるべくものが必要だと言いたいのだ。

つまり、美術家とはいつでも新しい表現を期待される宿命にあるのだ。昨日までの自分を乗り越えていくパフォーマンスが要求される。いくつもの立ちはだかる限界の壁を突破していかねばならない。だからこそ、大きな夢のある人生観を持つことで、既存にあるイメージに引きずられずに、自分のリズムで創作へ挑戦していけるのだ。完全な正解のない世界をしっかりと歩むために、1つや2つの失敗ではめげることのない、しなやかな強さのあるものがなくてはならない。

私は美術家の山根秀信さんの良さは何でしょうかと尋ねれたら、すぐに「大きな夢のある人生観の持ち主だ」と、答えようと決めている。なぜなら、それはこれまでの県美展での評価が論より証拠。毎年審査員の顔ぶれが入れ替わり、審査基準が如何ように変わっても、入賞や入選し続けていくのは、美術家のあり方がわかっている。美術家として果たすべき使命は、そこに公募展がある以上、自分の腕を試してみたくなるだけ。1回1回出展しては今の能力を試すしかない。その場その場できっちりと制作し、自分の個性を発揮すればいい。あとは野となれ山となれ。県美展は審査結果より作品発表の場なんだ。その潔さが審査員をはじめ、観る人の琴線に触れていくのだろう。その後ろ姿に大きな人生観を感じている。