巨星墜つ!

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巨星墜つ!今年の1月中旬にご家族の方から95歳で天寿全うのお知らせをいただく。しばらくの間、なんとも言えない気持ちになった。当然のことだけど、悲しいや寂しい、切ないなどの感情はこみ上げてくる。だけど、やはり最後まで作品制作をやり続けたことは素晴らしい。生涯現役のままやり切った人生に胸が熱くなってきた。嗚呼、やっぱりカッコいいぞ!急に先生との思い出が走馬灯のように浮かびだす。

最初に先生の作品を観たのは県立図書館のロビー。たしか小学校高学年の時で、三次元空間を表現した作品は理解不能だった。次は高校時代。母が経営していたギャラリーで先生ご本人とお会いする。そこで居合わせた人たちに、手振り身振りを交えながら、創作への思いを語る姿が熱かった。その半端じゃない熱量にただただ圧倒されてしまう。そして、何かよくわからないけれど、これが芸術家なのだと悟らされる。

芸術は独創性を発揮するために悩み苦しむ世界。その人生は自分自身の思い通りにならないことばかり。どうやったらみんながあっと驚くものを創り出せるのか。作品の評価に一喜一憂をしている暇はない。これでいいとすれば、そこまでしかなれない。たやすい答えに満足することなく、どこまでも問い続けるしかない。先生はまるで修行僧のように、いつも自問自答を繰り返す。ただひたすら創造とは何かを追い求めていく。創作に完成なんてものはないのだ。先生はずっとあの頃のままだった。すべての悩みは最善の創作のためにあった。(続く)