独創性

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約5年前、その若者とは初めて出会う。パッと見た感じは普通の会社員。まだ世の中には慣れていない様子で、もじもじした態度をはみかんでいた。すると、ここに連れてきた彼女の先輩が紹介してくれる。「彼女はイラストレーターを目指して、高卒で働いて専門学校へ通う資金を貯めています。ユニークなセンスの持ち主なので応援してください」とお願いされる。もちろん、答えはオッケーなのだが、その時は半信半疑だった。こういう世界でプロになれるのはひと握りだけ。言うまでもなく現実は厳しい。だけど、19歳だから無条件で夢見るべき年齢だ。思いっきり頑張れよとエールを送ってみた。

それからしばらくして彼女は専門学校に通い始める。憧れた場所はやや期待外れな面もあったけど、やはり自力で掴んだチャンスは粗末にできない。どんな環境でも住めば都。一生懸命に努力していく。そして、卒業後は期限を決めて、創作とバイト漬けの日々。早起きをして働いて、午後から深夜まで制作に没頭する。頭の中に浮かんでくるものを真剣に描いては、創意工夫と試行錯誤を繰り返していく。

つい先日、ひさしぶりに彼女の作品を観せてもらう。これまで一番高い熱量が伝わってくる。しかも画面はよどみもなく、流れるような勢いもあった。それにても万人には受けない個性的な作品。しかし、「みんなが好きじゃなくてもいいじゃん。誰かが好む世界を目指した方が存在する意味がある」と、同世代のコサカダイキ君に言われて、モヤモヤが吹っ切れて喜んでいた。自分の世界観が理解されると俄然やる気になれる。いつの時代も成長するには切磋琢磨が大切だ。これからも若い才能がぶつかり合えるように私も努力していこう。