中二病

f:id:gallerynakano:20210804234141j:plain


このたびも中原中也記念館を訪れた時に気になるのは、中也の年譜に書かれてある中学時代の弁論大会で、「将来の芸術」と題して雄弁に語った内容についてだ。そもそも普通の中学生でも、先走る気持ちが抑えきれずに、脈々としたエネルギーの発散先を求めて、大胆な行動を起こしやすい。怖いもの知らずで、ポテンシャルが高くて、身心ともに活発に働いている。

そんなバイタリティあふれる時代に、大人顔負けのセンスを持つ中也なら、事前に原稿などを準備しなくても、意気揚々と個性的な言葉で語っただろう。正誤なんてことは全く気にしない。堂々と独断と偏見を披露してご満悦したはず。おそらく、芸術が発展してこそ未来は明るく輝くと言い放って酔いしれていた。

そして、自分の才能に確信していた中也は真っ向から芸術に身を投じていく。ここから現実を直視しない人生が始まったのだ。その時々の一瞬一瞬を、その場その場の感情で表現していった。これはまったく想像だけど、大きくは外れていないはず。私は詩人への第一歩だと勝手に推察している。