お辞儀

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「挨拶は、人間らしく生きるための基本の心である。親に挨拶の心がないと、それは必ず子供にも表れる」という野村克也氏の名言がある。
そういえば、この人は最初に出会った時から礼儀正しかった。当時はまだ大学生。いつもうつむくような姿勢で、どこか弱々しい雰囲気で、こちらから声をかけようにも、「声をかけないでください」ってバリア(オーラ)が凄くて、なかなか近づくことができなかった。しかし、ここに入ってくる時は必ずお辞儀して、出ていく時も同じくお辞儀していた。私は礼儀正しさは生きるためにもっとも大切なツールだと思っている。これが普通にできれば、さまざまな窮地や苦境に陥っても、袖触れ合う人たちが放ってはおかない。そこから脱出するための助け舟がやってくる。さりげない所作は身を守るために有効なセキュリティになるのだ。
つまり、礼儀正しく生きることのメリットとは、型通りのことをただ繰り返すだけなのに、この一連の動作をきちんとできれば、渡る世間に鬼はなくなること。それプラス、柔道や剣道の型と同じように古の時代から伝わってきたものは、多くの成功事例によって洗練化されたものなので、上手く説明できなくても確かな合理性がある。いわゆる目に見えない力のことで、おかげさまという当たり前のことに感謝する文化で感性が研ぎ澄まされていくのだ。このたび、彼女はかつてお爺様が働いていた縁の深い場所でのお仕事と巡り合う。本当にご縁とは摩訶不思議もの。まさか、まさかで繋がるから面白い。これも積善の家に余慶ありだ。基本に忠実な人間こそが個性的な人生になるチャンスに恵まれるのだろう。