世界にひとつしかない自分

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『私は今、地方で生活をしていますが、地方とはそこにしかない、その地方の風土があり、それを個性として生かしてこそ成功できると思います。集団を都会とすれば、ひとりという地方のほうが個性を発見しやすいし、個性こそ都会(集団)、世界に通用することにならないでしょう。地方が個性的であることと、ひとりの人間が世界にひとつしかない個性を発揮することと同じことです。
芸術とは、その人の個性だと思います。個性とは人と違うことです。つまり、世界にひとつしかないことです。私が自分の個性を掴もうとしたとき、今までに誰も描いたことないものを描いてやろうと思いました。その作品が自分だけのものだと。こうして、私の個性となったある日の新聞を、そっくりそのまま全部エンピツで描き写した”ドローイング新聞”が生まれたのです。そして、この作品が私の原点になったのです。個性とは、世界にひとつしかない自分だと思います』(1985年1月発行 山口県立美術館ニュース第22号「見ることの 描くことの信憑性 それは自己存在のリアリティ 自己存在の信憑性を勝ち取るのです」より抜粋 文 吉村芳生
本日、イラストレーター りおた君と吉村大星君のトークイベントの収録があると聞き、二人の会話が広がるために、当時34歳だった吉村さんの文章を掲載しました。ちなみにこの時代に制作された「365日の自画像」は、22年後に六本木クロッシング2007:未来への脈動展(森美術館)に出品して、その翌年にロンドンであったフィリップス・オークションで高値で落札されました。あらためて振り返ると、やはりドラマチックですね。