秘密の鍵

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「(1960年代半ば、東京で活動していた時に、偶然テレビ番組で点字の特集を見て)白黒テレビの画面に映ったブツブツした点字は、何か空しいような感じがして、あの頃の感傷的な気持ちとピタッときて、『これは今のオレの姿ではないか』と強い衝撃を受けて、それから新宿の点字図書館に足しげく通ったよ。

文字には形象性があるけど、点字にはまったくない。しかし、いくつもの点の組み合わせによって文字が決まる点字は記号のエッセンス。点字は機能化の極地とはいえ、一面においては現代社会の機能化の方向性を持っている。勉強をしながら、自分なりに展示の持つ機能性を視覚的に訴える技法を発見し、いろんな方向を模索しながら、これがオレだという表現に辿り着いた。だから点字との出合いは彫刻における空間性の第一歩であり、一生を運命づける決定的な動機になったのだ」というのは彫刻家 田中米吉先生の言葉だ(原文編集有)。

このところ、米吉先生の助手だったヌマさんとお会いするたびに、先生の差君品やエピソードについて語っていただいている。とにかく、余韻が冷めないうちに少しでも多くのことを知って、先生の功績を称えるとともに、これからの美術家たちに役立つかもしれない何かを探り出したい。これまでの芸術の殻を破るための秘密の鍵が必ずどこかにあるはずだ。それを見つけるためにあらゆるチャンスを活かしていく学びにしていくだけ。未来へ繋がるドアを開けるためにチャレンジするのみだ!