おなじ年齢

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「こんどの個展で、田中さんは画廊という室内空間に挑戦するという。ここでも部分や形を自立させるよりも、床や壁などと同じ材質で作品をつくり、周辺に融けこませて、画廊の室内空間そのものを、作品として変質させようとしているようである。どのような空間が現出するのか楽しみである」というのは、1983年4月にGALERIE MUKAIの個展に寄せて、美術評論家 三木多聞氏の言葉である。
昨日、倉庫の奥にある書庫を開けて、当てずっぽうで本を探したら、無事にお目当ての本を発見する。さらに、まるで忘れていたパンフも見つかって一石二鳥が成立した。つまり、40年近く前の田中米吉先生が出展された彫刻展の画集を探したところ、同じ頃に銀座のギャラリーで行った個展のパンフレットも出てきたのだ。嗚呼、なんてラッキー!それとも先生の見えざる手のおかげなのかもしれないな。
それはさておき、この画像の先生の年齢は57歳。実は今の私とピッタリ同じ。だけど、貫禄やオーラは全然足元に及ばない。画像から伝わってくる熱量は半端じゃない。ちなみにこの2年後に宇部野外彫刻展で悲願の大賞を受賞する。目を患い絶望の淵に届いた招待状に奮起して始まった挑戦。そこから四半世紀が経ってたどり着いた栄光。その直前の米吉先生の画像には、夜明け前が一番暗いと言うように、飛び上がる直前がもっとも苦しさを感じる。やはり真剣な眼差しに言葉はいらない。いつ見てもカッコいい大人の姿だ。