チェンジ

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かつて美術作品販売を生業とする分野は、美術ファンのライフスタイルが比較的に均等だったため、およそ売れそうなゾーンがなんとなくわかっていた。いわゆる売れ筋といわれるもので、それを安定的な顧客で管理するデパートは、各地域の美術作品販売の窓口として、大きな役割を果たしていた。しかも、作品の価値を決める公募展で高く評価されたれば即人気作家になって、シンデレラのように一夜にして住む世界が変わっていった。夢のある時代・・・というより効率性の高い時代。マスコミから流れてくる情報を素直に受け止めて、そのままそれを信じていれば良かったのだ。
しかし、10数年前からデフレ社会による所得の停滞から崩れ始めて、今はまったく違うことになってしまった。美術の分野も多様化が進んで細分化されて、これまでになかった表現が次々に台頭し、美術ファンも権威的なものより、自分自身の好みで選ぶ風潮が高まった。ある意味、美術作品売買する分野が成熟したのかもしれない。さらに美術ファンたちが、自分の感想をSNSで簡単に掲載できるため、より個別評価が台頭して作品の本質的なものではなく、人柄とか見た目とかバックボーンなど、とにかく、作品内容以外のことで語られることが目立つようになった。
つまり、メジャーからインディーズにステージがなったことで、なんでもありの自由過ぎるものが市民権を得た。そのため表層的なものをアピールする粗製乱造タイプが増えている。私は自然に淘汰されるので、遠くから見守るようにしている。どうのこうの言うのは無駄である。それよりもやはり才能を感じるものとワクワクしたい。どんなに時代が変わっても、その人が持つ個性を活かしさえすれば、面白い作品になっていくはずだ。独創的な作品になるように切磋琢磨していくのみ。この基本を忘れなければ、やりがいのある仕事は続いていく。