新発見

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「キノコは千人の股をくぐる」という名言がある。この場合のキノコとは松茸のこと。いわゆる松茸狩りに行った時、すでに千人が探した後だったら、もう松茸は残っていないと考えてしまうだろう。しかし、そこへ千一番目に行った人が偶然見つけることだってある。つまり、多くの人が熱心に同じものを隅々まで探し求めたものでも、誰にも気づかれずに、目に入らないまま残っているものは意外とたくさんある。だから、競争相手が多い業界だったとしてもあきらめないで、徹底的に探し続けることが大切だという意味を指す言葉だ。
今から四半世紀前に紹介されて知り合った若者がいた。陶芸を修行しているという。そこで私が主宰したグループ展に出展してもらったところ、その会で講演で来られたキューレーターに、「彼は天才肌。土の表現と相性がよくて、単純なことをしても見どころがある。上手くいったら、神の手を持つと言われるかもしれない」と絶賛された。ちなみにその方の専門はアジアの現代美術で、その分野では第一人者として有名だが、陶芸についてはまったくの門外漢。だけど、今日の彼の作品のストロングポイントになっている。それらを活かして、誰にでもできそうなキノコを、誰にもできない独創的なキノコとして、高く評価されているのだから、お見立てはめちゃくちゃ正しかった。これも先天的なものプラス、地道な研究と努力を惜しまなかった賜物だ