シンデレラストーリー

f:id:gallerynakano:20211217233603j:plain


1996年10月発刊の県美ニュース「天花」の特集記事は、この年に50回目を迎えた県美展が変わった点として、作品を「つくる」人々だけが参加する展覧会ではなく、「みる」あるいは「ささえる」といったような美術との様々な関わり方を通して、より幅広い人たちが参加できる展覧会になった点を紹介する内容だった。つまり、これまでの選抜された作品を展示するだけではなく、同時にワークショップを通じて美術鑑賞の多様な楽しみ方を体験的に学習すること、さらに展示作品のガイドなどで鑑賞者の感性を刺激して、総合的で豊かな美術文化を育むことを目指すとしていた。

そうして始まったワークショップ部門に第一線で活躍する美術家が招かれた。県美展の会場内に作品を展示するとともに、講座室をアトリエに見立てて、公開制作や過去の作品を観ながら気軽にトークできるようにもした。ちなみにこの県美展から公開審査会が始まり、その行方を美術家も興味津々に見守った。すると、とても気になる作品が落選してしまう。エネルギッシュで面白いのになぜなんだろう?後日、その作者と美術家は縁あって出会い、そして、都会のギャラリーで企画中のグループ展に誘い、落選した彼女も喜んで出展することになった。これがきっかけになって画家人生が始まった。まさにシンデレラストーリー。全国初の公開審査会は伝説のドラマをつくっていったのだ。