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NHK連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ。安子、るい、ひなたの三世代ヒロインが紡ぐ、戦前の昭和から現代の令和までの、家族三世代100年にわたる物語。このドラマの序章になる安子編は、たった15分間に波乱万丈な人間模様のてんこ盛りに、一瞬たりともテレビから目を離していけなかった。続く、るい編になってからは、ハラハラドキドキの展開は変わらないものの、それは主人公たちの恋愛要素が強い胸キュンであって、朝からベタな青春ラブストーリーを見るハメになった。そして、ひなた編は始まったばかりで、これからはよくわからないが、今のところ3枚目キャラによる、ドタバタ系の青春コメディー路線のような感じになった。つまり、ひとつ物語で3度美味しいと言うのか、飽きやすい人々に常に話題を提供する、ハイブリッドなドラマと評するのが正しいのかもしれない。

そんなドラマの中の映画の台詞、「暗闇でしか見えぬものがある」。ヒロインの夫になるトランぺッターが、自分の人生と重ね合わせて、背中を押されてコンペ挑戦の意欲を高めた言葉だ。ふとこの場面が頭に浮かんだのは、下関市立美術館の「特別展 野村佐紀子 写真展『海』」で作品鑑賞中のこと。展示室の照明は暗いトーンに抑えられていて、さらに作品もモノクロ写真であるため、会場全体が落ち着いた雰囲気で『静寂』が演出されていた。なんともハッキリしなくて、モヤモヤしたものが感性をくすぐる。こういう時は写されたモチーフについて、ひたすら論理的に攻めていっても、記録写真ではないからお門違いの鑑賞になってしまう。それよりも自分自身の想像力を起動させよう。創作物は観る人によって、感じ方はそれぞれだから、その場の空気に身心をまかせて、ぽつぽつと思い浮かぶものを拾いながら、自由に破片を組み合わせて面白がればいい。私たちには暗闇にあるよくわからないものを補正してくれる想像力を活かせば世界観は広がってくる。足らないものを豊かな発想で楽しんでいくのだ。