目から鱗が落ちる

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若い頃、よく美術とはなんぞや?と考えていた。いつもこの疑問が頭の中で渦巻いていた。とはいえ、美術は多種多様なものがあって、すべてに通じることは難しい。美術の価値観や考え方、行動などを簡単に修得することはできない。五感でピンとくるようになるまで粘るしかない。自分自身の可能性を伸ばすために、さまざまなことに首を突っ込むながら、その時々にいいなと感じることを大切にする。いろんなことの良さに気付くと幅が広がり、自分らしいものの見方ができると信じていた。
今から思えば、あまりにも頑なだった。あらゆる美術を学ぶことで、理想のギャラリストになれると信じていた。本当に悶絶するくらい恥ずかしい黒歴史。ストイックというより柔軟さに欠けていた。あまりにも力み過ぎ。そんな私に転機が訪れる。アラサーの頃に10歳年下の学生と知り合い、やり取りをするなかで、リラックスしていった。それは彼らが美術に対して悩む姿を見て、同じ頃の自分と重なってシンパシーを感じる。おそらく、美術と真摯に向き合った者が直面するプレッシャーで、この世界で生きるための洗礼だ。若い彼らと一緒にいるうちに必要なことは、体験しながら磨けばいいことに気付かされた。
このような感じで彼らのおかげで、いくつものことを学ぶことができた。目から鱗が落ちる。好きでやっていれば、苦しさもいとわず前向きになっていく。マイペースでいいのだ。やはり人生は必然的な出会いが待っている。童謡のメダカの学校のように、誰が生徒とか先生かがわからない。みんなが先生であり、みんなが生徒でもある。すべては学びのきっかけになり得ると捉えれば、どんなことも一層面白くなってくるのだろう。