子供の頃から絵を描く時間が楽しくて大好きだった。画用紙に向かっているだけでワクワクする。だから、誰かに褒めてもらえなくてもいいというのか、本当はしっかり見て欲しいけど、実際に見てもらうのはとても恥ずかしいので、そっと一人にしておいてもらった方がいい。とにかく、そんな感じ。どういう風な絵を描くのがいいのかはわからないし、こんな風にしたい表現も見当たらなかった。具体的なことなんてまったくない。ただただ絵を描いていたいだけだった。
しかし、通っていた小学校の同じのクラスに、ひときわ絵を描いて目立っている子がいた。嗚呼、センスが違い過ぎてかないそうもない。直感的にそう思った。誰かに比べられて揶揄された訳じゃないけど、急に自分の居場所がなくなったような寂しい気持ちになった。むしろ、素直にうらやましい。ああいういい感じの線でやさしく表現して、そこに明るい色調で包み込んで、ポップな雰囲気で可愛い絵を作りたい。勝手に自分自身の不甲斐なさと比較しては、勝手に自分から落ち込むばかりだった。
だけど、彼女は絵をやめようとはしなかった。それは意地と根性とかではない。それ以外のことに興味が湧くことはなかった。辛いことの方が圧倒的に多くあるが、いつも絵を描くことは一番好きなこと。ずっとマイナーになるかもしれないけど、絵を描くことを第一に生きていく覚悟があったのだ。それゆえ、劣等感に満ちた自分の心を誤魔化さず、目をそらさずにしっかりと向き合っている。好きなことを続けられることは才能がある。自発的に創作する習慣を持ち続け、美術への愛と熱意を持つのは才能だ。このまま頑固な魂を磨いて、いつか花咲く日まで努力すればいい。
