ありふれた風景

昨日は北九州市立美術館分館で始まった「吉村芳生 超絶技巧を超えて」に参上して、ひさしぶりに吉村さんの作品を心ゆくまで堪能する。やはり、少し年月を開けてから鑑賞すれば、新鮮に感じてしまうことが多くある。特に、このところ大星君からいろんなことを教えてもらい、その負けん気の強さや奇想天外な発想などを学び、表層的に見える鉛筆表現の世界だけではなく、眼に見えない思いまで感じられるになった。何ごとも小さな破片のヒントが増えれば、そこからいくらでも展開していける。とことん自分自身の想像力を屈指し、新しい観方を発見すれば俄然面白くなってくるのだ。

ちなみにこのたびの展覧会では、吉村さんの素敵なお言葉と出会う。1977月12月、27歳で初めて東京で個展をする時に、決意表明をするような気持ちで書き綴っていた。「目を、手を、ただ機械のように動かす。機会が人間から奪った人間の感覚を取り戻すような気がする。四二.一九五キロを自動車で走るのではなく、自分の二本足で走る。マラソンマンは、生む、刻む時間、息を吐く、空間を自分のものにするため、ひたすら走り続けるのかもしれない。僕にとって、描くことがそうであるように 」。

このポリシーはまったく最後の最後までブレることはなかった。いつも武器である鉛筆を最大限に活かして、ありふれた風景に新たな生命力を与えて絶景にしていく。吉村さんのこの原点にこだわり、生涯をかけてツ級していった。美術という途方もない世界で、真正面から自分らしく戦い、独創性を求めて創作していった。どこまでも芸術家であるために人生を捧げていたのだろう。次回お会いする日まで、勉強しておこう。向上心が刺激されて有意義な時間になってよかった。