似顔絵

供の頃、地元で天才絵描き少年と呼ばれていた。大人の社会に交じっては個性的な作風で目立っていた。しかし、高校生になったとたんにスランプに陥る。何を描いても空虚な気持ち。不燃焼のまま3年間が過ぎ去っていった。これは早熟だったが故に起きた洗礼と言えるもの。高すぎる理想像に七転八倒。現実とのギャップに悩んでは落ち込んでいた。なんとも言えない苦しい時期だったけど、どうしても絵を描きたい気持ちが勝って、専門学校へ進んで学び続けることにした。

とにかく、このまま描くことを終わらせたくはないし、やはりイラストの世界はすごくキラキラして見える。どこまで創作していけるのかはわからない。だけど、華々しい賞歴も仕事関係の人脈もなくても、裸一貫で自分の実力次第でのし上がれるはず。これほどハングリーにガツガツやって、成り上がれる業界はそう多くない。よしやってやろう!そう心に強く決意して、卒業後はすぐにプロ宣言。若さゆえの直線的な行動だったけど、その熱意が人々に伝わり少しずつ仕事に繋がっていった。

その時代に役立ったのは似顔絵。さまざまなイベントで地道に行い、いろんな人たちと知り合って、どんどん仲間を増やすことができた。そして、自分の絵で家族や恋人同士が喜ぶシーンにほくそ笑んだ。収入が得られることも嬉しかったけど、自分の絵で笑顔になる人たちと触れ合うと、お金をもらうのと同じくらいの価値を感じた。こうして、りおた君はイラストレーターとしての第一歩を歩み出した。まだまだ右左もわかずに駆けだしたばかり。その分ほど、純粋に夢と希望に満ち溢れ、小さな出会いに感動する日々だった。しかし、この時に一番よくわかっていなかったことは、10年後に大きな仕事に次々にめぐまれて、売れっ子になって活躍する自分の未来の姿だろう。