見よう見まね

「見よう見まね」という言葉がある。その意味は人のすることを見て、その人がしたことを同じように真似することだ。いわゆる美術の基礎を学ぶうえで、偉人先人などの他者の真似をすることは、決して悪いものではない。キーポイントになるのは、ただ単純に真似だけで終わるのか、真似することを通じて、自分らしいスタイルを構築していくかである。ただ単純にそのままやれば、物真似の域から抜け出せないままで、創作に必要なオリジナリティーを放棄したに等しい
だから、物真似は出発点においては積極的に行い、その後は創意工夫を繰り返しながら、独自性のある世界観を求めていく。憧れて物真似したくなる作品とは、それ相応に高く評価されているもの。それゆえに、よく似たものを創りたくなるが、それでは創作するのではなく、上手く模写したことに過ぎない。創作を一所懸命やるのではなく、一生懸命やっているふりをするだけ。どうすれば評価されるのかが第一になり、美術へ無我夢中とは言い難いマインドに陥っている。
これでは新しい創造は何も生まれることはない。自分の頭で何を考えたり、自分の肌で何かを感じていない。人はそれぞれ違う個性を持っている。そして、それを活かしてなるべく良い作品を創りたいと思っている。そういう意識によって個性的なイメージが湧いてくる。創作するのにもっとも必要なのはイマジネーションだ。 もちろん、イマジネーションが豊かでない人でも、作品制作することはできるけれど、美術家になることはできない。つまり、物真似の力を借りてイマジネーションを育んでいくことが大切になるのだ。