熱狂

昭和歌謡史に名を遺した作詞家 阿久悠氏。その著書『甲子園の詩 敗れさる君たちへ』の序文に以下のような一節がある。

なぜにぼくらはこれ程までに高校野球に厚くなるのだろう。縁もゆかりもない少年たちの技術未熟な野球に、それこそ宗教とでもいうべき熱い思いで声援を送るのはなぜなのだろう。それもひいきのチームが勝ち進めばいいといったような応援意識ではなく、ただひたすら、今、甲子園で行われているという存在感に熱くなるのであるから、不思議といえば不思議である。

この言葉は、スポーツを今宵なく愛するイラストレーター りおた君によく似合う。その日、その時、その瞬間に起きた選手たちの必死なプレーに、どんな結果であっても無条件で拍手を送り、目に焼き付いて消えない残像を、独自の切り口でエネルギッシュに表現していく。悲喜こもごもすべてのドラマをしっかりと受け止め、なお熱く心を燃やしながらも、冷静に核になる生命の美を見つけていく。静かに、そして、激しく感性を揺るがせて、一気にヒーローを描きあげていく。だから、りおた君のイラスト作品はスポーツ賛歌というべきもの。それゆえに、写真では感じることができない素晴らしい世界観を創り出せるのだろう。