進化論

「荒れ地が2つあった。1つはまったく人の手が入っていない荒れ地。もう1つは、25年前に1区画だけ囲いをして、ヨーロッパアカマツを植えた荒れ地。この囲いによって、若木は牛に食べられなくなり、大きな樹木に成長する。その結果、調査すると普通は荒れ地では見られない植物が12種類も見つかった。植物が変わるとそれを食べる昆虫にも影響が、そして、鳥にも影響があった。虫を食べるタイプの鳥が普段、荒れ地では見かけないものばかり、6種類もいることがわかった」というのは、ダーウィンの言葉である。
自然環境はさまざまな要素が複雑に絡み合っているので、ある1つの出来事で、生存競争の条件が変わり、その結果、勝者と敗者が入れ替わり、進化の方向が変わってしまうこともある。単純に1つの種と1つの種が直線的に繋がりあうのではない。生態系というものの全貌は、細かいことが複雑に絡み合うため、1つの小さなことが大きな影響になることもある。さまざまな種類がさまざまなことで関係を保ち合うから、何か1つが失うことは危機に発展するかもしれない。
ところで、今の美術界はこれまでになかったほどの大きな規模で変化している。デジタル機器が飛躍的に発達したことで、ネットによるコミュニケーション文化が進化し、これまでにない人流や作品売買などの動き方が出てきた。それはまるで自然淘汰。世界のいたるところで起き続けている。ごくごくわずかなものから、あらゆるものまで変化しているのだろう。ただし、いつの時代もその時代にあう、よりよき何かになることを目指すことに変わりない。美しい創作への思いは同じままなのだ。