美を求めて

「国家は少数の異常(天才的)な人々を挙げて、その名誉を誇るかも知れない。しかし一国の文化程度の現実は、普通の民衆がどれだけの生活を持っているかで判断すべきであろう。その著しい反映は、彼らの日々に用いる器物に現れる」というのは、民藝運動の主唱者である柳宗悦の言葉である。
民藝とは、民衆の暮らしのなかから生まれた美の世界。柳はいわゆる美術や工芸の分野にとどまらず、人とモノの関係、人を包み込む自然の素晴らしさや社会の中に存在する豊かさに着目していった。すなわち、人々が人生をより深く味わうために品格を育むための哲学であり道標だと説いた。
先週、大和佳太君親子が営む明善窯へうつわを求めて参上する。いつ来ても県立大学近くから約1キロほど山の麓に入ったとは思えない豊かな自然環境だ。これも父・潔さんの登り窯へのこだわり。萩焼は登り窯でゆっくりと焼くことで、土は柔らかい風合いに仕上がり、その灰は自然釉薬となって作品に溶け込み、色合い的にも造形的にも美しいものが出来上がる。元の窯場は近隣にどんどん住宅が増えて、薪で火を起こす登り窯は安全面から難しくなり、この場所へ移転することを決める。不便不自由な場所だけど、ここには創作の自由がある。お二人の目でも手でも楽しめる焼き物づくりに敬意を表し、これからも暮らしを彩る世界を楽しみにしている。