人生

「人から見て幼稚だろうと何だろうと、自分が面白いと思うことをやれれば、人生はそれで十分なんだな、と。他人に褒められるように生きる必要なんて、まったくない。それが世の中に受け入れられるかどうかは、あくまで結果でしかない」という漫画家 石ノ森章太郎の言葉がある。
先週より県立美術館で始まった「庵野秀明展」。1960年に宇部市に生まれで、幼少の頃からテレビアニメや特撮ものに感銘を受ける。大学時代は手掛けたアニメで一躍注目を浴びるようになり、その後は数々のアニメ制作に携わっていくうちに、敏腕プロディーサーとしての地位を築き、近年も個性豊かな映像作品を発表して、次々にヒット作を創り出していく。
私は庵野氏の作品はかじった程度しか知らない。そこでこの機会に少しでも吸収しようと思いながら鑑賞することにした。それにしても、いろんなものが所狭しと飾られている。さまざまなものに影響を受けて、感性は磨かれていったのだろう。この中で最初に私の目を引いたのは、庵野氏が少年時代に刺激を受けたテレビ番組や映画などの資料コーナー。私にとっても懐かしいというより、心躍らせたものばかりとの再会に、いつしか当時の自分にもどったような気分を味わった。
特に仮面ライダーの初回放送日「1971年4月3日」の表記に、思わずハッとさせられてしまう。それは私が小学校入学直前の年月日だったから。あの頃の無知無力の自分を思い出し、背中がむずかゆくなっていく。漠然と未来は明るかったけど、そこからの現実はとても厳しかった。それでもなんとかなったのは出会った人々のおかげ。たくさんの支えにめぐまれて今がある。例えあの日に戻ってやり直すことができたとしても、今と同じくらいの幸せに辿り着けるとは限らない。人生は偶然の連続なのだ。有難いとは本当に有難いのだ。しみじみと感謝するしかないのだ。