創作作業の原点

『巨大ロボットアニメ』は、子供たちの潜在欲望の現れであります。つまり、『巨大ロボットアニメ』とは、子供達の持つ色々な抑圧やコンプレックスの補償、抵抗の手段、代償行為なのです。大人達は、『生きることのつらさ』を知っています。と、同時に『人が生きることのおもしろさ』をも知っています。生きるために、例え〈嘘〉だとわかっていても、『正義と愛』という〈夢〉や〈希望〉が必要なのだ、と知っています。
私たちはアニメーションという表現手段の特色、つまり、全てが人の描いた『絵』であるという世界観を生かしたことにより、子供達に虚構と現実との違和感なく、ピュアに伝えることができるのです。それが『巨大ロボットアニメ』の持つ最大の魅力です。本企画は、この原点にさかのぼって、本来の『巨大ロボットアニメ』の魅力を新たに掘り起こす所にユニークさを発見したい、と思います。(「人造人間 エヴァンゲリオン〈仮題〉 企画意図 巨大ロボットアニメの魅力とは?」)より転載
ただいま県立美術館で開催中の「庵野秀明展」。展示会場に入ってすぐのスペースは「第一章 原点、或いは呪縛」と題し、庵野氏が子供の頃にあったテレビや映画の特撮で登場した飛行機やロケットなどの模型が飾られていた。私はほとんど同世代なので、それらのミニチュアセットは馴染み深く、そして、ただその前に立って眺めているだけで、とてもしあわせな気分になってしまう。やはり、アニメや特撮などのヒーローものは、多くの子供たちに大きな夢を与えて、心を豊かに育む源になるのだろう。いつまでも少年の心のままでいる、庵野氏の創作作業の原点に触れたのだった。