ブーム

『ブーム』と呼ばれる言葉がある。それはあるものが一時的に盛んになること。急に熱狂的な人気の対象となることを意味する。いわゆる世間一般的にブームとは、大きな流行の波がやって来て、そのまま何割かは定着していって、また、これまでにあった価値観を呑み込むため、何割かは波でさらっていくことによって、その業界の新陳代謝を促していくこと。新しい社会構造へ変化させる引き金になって、マンネリズムで沈滞した雰囲気を一層する活力の源だとも言える。つまり、ブームというものが巻き起こらなければ、どんどんガラパゴス化していって、魅力が失われて厳しい状況に陥る運命にある。

先月、東京を拠点に創作活動をしている美術家 末永史尚君に会った時に、今、東京では現代美術が何度目かのバブル景気が起きていると教えてもらった。なるほど!思いっきり納得する。なぜなら、県美展大賞受賞者の手嶋大輔君の活躍ぶりや、この夏にANAとコラボして脚光を浴びる木原千春さんなどをネットで見ていたため、そのような流れになっているのではないかと思っていたからだ。そして、かつて隆盛を極めた美術分野が、近年、低迷している現状も知っていたので、ついに日本の美術界も権威主義から脱して、個々の作品主義を尊重できるコレクターが多くなっているのだろう。

これもネットで美術作品の情報収集を正しくできる人が増えてきたことが大きく影響している。どういう賞を受賞したとか、どういう場所で作品を発表したとかではない。自分の作品について語れる人に共感し、かつ、SNSを通じて普段からの姿勢も可視化されているので、複合的な視点から美術家や作品を判断できるようになっている。ある意味、現代美術を見続けて慣れてくれば、誰かがつけた評価が気にならなくなって、それよりも自分のフィーリングで作品を鑑賞することを優先できるようになれる。とても歓迎すべきムードが起きている。山口も同じでありたい。