丸くとも一角あれや人心

「丸くとも一角あれや人心 あまりまろきは転びやすきぞ」とは、坂本龍馬が好んで使った言葉で、温厚で周囲の人たちと円満にできるのは良いこと。だけど、それだけではなく、言うべき意見をズバッと口にできることが望ましいという意味である。
いつも人間関係が穏やかになるように気を配り、波風を立てないように丸くおさめて、輪をつくり輪の中で暮らすことを善である。しかし、気を配り過ぎて言いたいことが言えなくなると、だんだん馴れ合いの関係に陥っていく。ついつい相手のことを思い過ぎて、遠慮から自分の意見を引き下げてしまう。これでは切磋琢磨が正しくできない。どうしても譲れないことであったら、自分らしい言葉で思い切って伝えてみよう。ハッキリとこだわっているを口にすることで、どういう考え方をしているのかがオープンになるだろう。自分らしい一角を見せて、風通しの良い関係を構築することが大切なのだ。
 美術も同じようなもの。まずは穏やかなコミュニケーションに心掛ける。むやみやたらに主義主張して、一方的に語っていくことはよくない。ある程度は相手の許容範囲を見極めてから語り合おう。そして、とにかくさまざまな個性の持ち主と混じり合っていく。いつもの仲間たちばかりとつるんでいると、阿吽の呼吸で通じ合う安心感はあるものの、違った視点から見つめることがなくなり、もののを見る幅が狭くなっていくだろう。いつの間にか好き好きの偏った価値観に染まって、新しい発見のチャンスを失って、成長するチャンスを失う危険性が出てくる。
だからこそ、その人の考え方や価値観などを自由に述べ合い、小さな意見も尊重しながら、風通しの良い関係を築いていこう。一角を適切に使っていって、本気で美術談義ができる仲間と知り合い、向上することを目指していくのだ。