信念

経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏。その名言に「対立大いに結構。正反対大いに結構。これも一つの自然の理ではないか。対立あればこその深みである。妙味である。だから、排することに心を労するよりも、これをいかに受け入れ、これといかに調和するかに、心を労したい」がある。

いわゆる宗教を信仰していくということは、一つの教義に沿って生きることと思われている。これぞ我が人生を照らす教えだという信念を持つことから始まる。それゆえに、自分の信じることが正しければ、それ以外のものは間違っている、と短絡的な考え方になる人が多い。言い換えれば、自分が正しければ相手が間違っている、という考え方に押し通そうとする人は少なくない。

美術家も同様に何らかの信念を持ち続けなければならない。信念を持たなければ、あらゆることに流されてしまう。だからこそ、一つの確固たる信念を持つことは必須条件。しかしながら、いろんな個性が渦巻いている美術界では、人それぞれ多種多様な信念が存在する。自分とは違った信念を持って生きる人たちがたくさんいる。あちらを立てればこちらが立たず。作品を比較したところで、矛盾しか生まれない。つまり、信念を磨くためには、今の創作を信じることと、疑うことの狭間を大切にしていく。どんな小さなことでも正しいか正しくないか、良いか悪いかということに、自分なりにこだわって創作することで、素晴らしい信念に育まれていくのだろう。