オブジェ

例えば、今あなたは美術館の壁面にある絵を観ているとしましょう。その場で目を閉じれば、当然、観えなくなる。だけど、絵それ自体がなくなったわけではない。ということは、絵を観た印象が残れば、絵を観たことになるのでしょうか。それとも、評論家の解説を読んで学べば、絵を観たことになるのでしょうか。しかし、それは誰かに従うだけで、鑑賞したと言えるのでしょうか。

なんて屁理屈の疑問符が次々に浮かんでくる作品が県美展にあった。その作品は山根秀信さんの「オブジェ - 風景S40-2022」。一般的に絵は壁面に沿うように飾られるのだが、7枚の絵を床の上に重なりあうように展示することで、単純に絵と向かい合い鑑賞する行為ではなく、絵の集合体として曖昧に存在させることで、絵でも立体でも楽しめる作品として成り立たせた。

つまり、これは先入観で美術作品を観るな!と言いたいのかもしれない。もちろん、先入観は基礎となる知識なので、これがなければ作品の善し悪しを判断する前提条件を失う。何かを手掛かりにしないと、判断を成り立たせることは困難である。山根さんの作品は観る人に問いかけていた。これまでの常識に縛られず、もっと自由に鑑賞しようよと、クールな作品からメッセージが発しっていた。とても作品のコンセプトが深くて、まだまだわずかしかわからない。だから、やはり芸術作品だと思った。