古代エジプト展

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「エジプトはナイルの賜物」とは、ギリシャの歴史家ヘロドトスの言葉で、ナイル川が運ぶ肥沃な土のおかげで、エジプトの壮大な文明や国家が築かれたことを意味する。

34年ぶりに県立美術館へ帰ってきた「古代エジプト展」。当時、私はギャラリストとして駆けだしで、まだまだいろんな面で経験不足で、融通の利かない石頭だったため、美術館で考古学的な文化を鑑賞することに馴染めなかった。いわゆるアート作品を鑑賞するには、実際の価値観や観念などなど、とにかく、そういった枠組みから解き放って、自由に観るから面白さや魅力があると考えていた。だから、古代エジプトの歴史ありきで観ている多数の人たちの雰囲気に、居心地の悪さを感じながら観まわったことを覚えている。

さすがにこのたびは年月を積み重ねたことで、その時々の作品に応じて、宗教的だったり呪術的だったり、はたまた、アーティスティックにと、自分なりの視点で楽しめるようになった。要するに美術館って想像力を磨く場所という本質を尊重できるようなった。さまざまな鑑賞方法を使いながら、それぞれが持つ個性を面白がって、作品をたっぷりと自由に味わったらいい。注意すべきことは、観えるものを観えるがままに観なくちゃいけないという固定化された先入観だ。思い込んだらイメージは小さくなる。紀元前数千年の時を超えて出会った作品群を、今の時代の感覚で繋がることが大切になるのだろう。