音吐朗朗

作品を前にして声を出してみると、これまでと感性が違った働きをするかもしれない。その昔から美術談義をしていくうちに、作品への理解が深まるのは偶然ではないように思われる。声を出して鑑賞していくことで、目だけで見つけることのできない作品の面白さを発見する。じっくりと自分ひとりの視点で作品と向き合い、黙って気を散らさずに深く考え込んでしまうと、小さな袋小路の中に入り込んだまま、出られなくなることになりかねない。

だから、声を出し合うことは思いのほか、鑑賞する時間を充実したものにする。ああだこうだ語り合えば、目に飛び込むものが増えて、豊かさを深く味わえるようになる。さらに、だんだん気心が知れてくると、調子に乗って浮世離れしたことをしゃべるから、予期しなかった世界観まで楽しめるだろう。つまり、しゃべって、しゃべることで思考回路も活性化させていくこと。それぞれ違う物差しを活かして、感受性を柔軟に育んでいこう。