モチーフ

香月泰男画伯の言葉に「単調とも言えるここ山陰の片隅の風物も、私にはモチーフ天国(大げさか)、春陽はいなかほど美しい。私はその中にいまいる」がある。
いわゆる作品のモチーフは特別なものである必要はない。いつでも今いる場所から見つければいい。その瞬間にピンとくるものだったら、それを信じて追求していくこと。自分のペースで触れていけば、身のまわりにあるものとの、大切なつながりに気づけることもある。自然は自分次第でいつでも仲よくすることができる。景色の中にある美しさを発見し、楽しめば豊かさが育まれてくる。そういうことを言いたい言葉だと思った。
ところで、ただいま個展開催中の佐々木範子さんは、いつも居場所から心静かに周囲を見渡す。そして、自然の素晴らしさを再発見しながら、ふつふつと創作意欲を燃やしている。何ごとも五感で感じて、素直な心で受けとめれば、創造力は豊かに育まれていく。つまり、自分の居場所で一生懸命に取り組めば、そこにある魅力に刺激されていく。心の持ち方で身近な風景の彩りは変わってくる。佐々木さんの作品の鮮やかさは、そうした過程を経て創られていくのだろう。