読書の秋

吉田兼好徒然草に「ひとり灯のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる」という一文がある。これは書物を通じて会ったことのない昔の人と交流すれば、その人なりを知るうちに何が面白いかに気づかされて、古典に親しむようになれることのたとえだ。

ちなみに私は40代半ばから本とお友達になる。その切っ掛けは山口情報芸術センターYCAM)へ行った時に、なんとなく併設の市立図書館へ足を踏み入れたことに始まる。当時、人生経験で得たことを裏打ちしなければ、ダラダラと歳を取りそうだと思っていた。人の生きている時間は有限である。だから、本で先人偉人の言葉たちに触れて学ぼうと覚悟する。

しかしながら、本を1度2度読んだくらいでは頭に入らないし、その内容を理解する力は弱くて、それまで不精していたことにたたられる。さらに寄る年波には勝てない。だけど、わずかでも知識が増えると発見力が高まってくる。例え破片のようなものでも、知ると知らぬとは大違い。微差は大差だと自分に言い聞かせて、本を読むことを身に付かせたのだった。