十年一昔

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ことわざの「十年一昔」。これは10年も経つと人が考えていることや、身の回りの生活環境などが変わってしまうという意味だ。ただし、近年ではこの間隔が10年よりも遥かに短くなったように思う。あらゆる文明の利器が発達して、これまでより早い速度で、世の中にある様々なことが変化していった。それが良かったのか、そうでなかったのかは、個人個人によって答えが違うだろうが、その中を生きるしかないのだから、どんな時代になっても受け止めていきたい。

ところで、先日まで行われた「第10回やまぐち新進アーティスト大賞受賞記念展」。このたびの第10回目でひとまずお開きになって、今後は新しい制度を検討するらしい。私はこの公募展の第1回目の募集要項を見た時に、正直、果たして上手くやっていけるのかを疑問に持った。その理由は百貨店という会場で発表することに違和感があったのだ。つまり選出される美術家はデザイン性と商業的な要素の強い人が有利で、新しい世界を求めて創作する現代美術家には不利だと考えたからだ。

さらに当時はまだまだ今現在ほど、若い美術家に対して寛容な雰囲気ではなかった。伝統的な世界が幅を効かせて、現代アートには厳しい空気が漂っていた。しかし、そこから日本は一気にグローバル化し、また、山口においても秋吉台国際芸術村や山口情報芸術センターYCAM)から発信される文化が定着してきて、それまであった壁がなくなって、若い人が自由に創作できる風土ができ上がった。第10回目の大賞受賞者が鈴木啓二朗君であることは、時代の後押しもあって様々なことが変わった山口のアートシーンを象徴している。結果から考えてみると当然なこと。実に理にかなった公募展。やっぱり世の中は面白いものだ。