目から鱗が落ちる

その昔から「山口市には何もない」と決まり文句のように言う人たちがいる。私はこのようなことを知ったように言ってくるのは、人間関係において自分の優位性を確保しようという人だと思っている。そもそも「何もない」とは如何なることを指すのか具体性に欠けるため、なんだか後出しじゃんけんで決着をつけようとする姑息さを感じる。

それとも般若心経の一節「無限界乃至無意識界」のように、眼で見て認識する眼界から、心で感じ認識する世界まで何もないという意味で言っているのなら大したもの。人は大体において、自分の価値観にこだわっていくため、どうしてもそこから執着が生まれて煩悩にまみれる。だから、すべてから解放された「何もない」境地が大切になる。

そんな「何もない」と言われていた山口市に、突然思わぬ吉報が舞い込んできた。それはニューヨークタイムズの「2024年に行くべき52カ所」のなんと3番目に選ばれたのだ。その真偽はさておき、それよりも青い鳥の物語と同じで、幸せは気が付かないだけで、身近な場所にあることを意識する。山口市民はセールスポイントを考えて、この街の素晴らしさを再発見している。目から鱗が落ちたのだろう。