「美」「術」

漢字の「美」と「術」を合わせて美術になる。その成り立ちは明治初期に万博へ出展する際に、独語を和訳して暫定的に生まれた言葉だと言われている。なんて絶妙なネーミング。本当にこれしかない。辞典には視覚的、空間的な美を表現する造形芸術と書かれているけど、そんな理屈がわからなくても、文字の印象だけで感覚的に伝わってくる。

ちなみに「美」の意味は見た目に素晴らしいや形が良いこと。「術」は特定の目的や目標を達成するための技法や方法、手段を指す。この2つの説明をそのまま足すだけで、美術とは何かがわかってくるから面白い。文字を掛け合わせて発生した意味合いは、ポジティブな感覚に溢れていて、新しい感覚を創り出すエネルギーの源になるだろう。

要するに美術は人生を豊かに彩るために必要な感覚を育んでくれる。美しいものを求めていくことで人間として成長できる。しかしながら、よく美術はわからない世界だと言われている。それは何かの基準に従う必要がなく、創る人も観る人も自由に楽しめて、実際は正しい答えがないことの裏返し。言い換えれば、自分らしい美しい術にこだわって、独自性の高い人生を目指して生きることだ。