面授

松尾芭蕉俳諧で自然観察について述べた「松のことは松に習え、竹のことは竹に習え」という名言がある。

いわゆる創造力を向上させたいと思っているのなら、創作の極意についてネット検索で調べまくったり、図書館で本を読み漁ったりするよりも、積極的に創作活動を展開するキャリアの長い美術家と直接会って習った方がいい。じっくりとその人の美術論を聞かせてもらい、熱い言葉で感性を刺激されたら、本質を理解することができるだろう。

このことを仏教用語で「面授(めんじゅ)」と言う。文章などで広く教えるものではない重要な教えを、師から弟子へと直接伝授することを意味する。 一昨日、ギャラリーでは正に面授があった。さらなる飛躍を目指す若い美術家に、経験豊富な美術家がアドバイスをする。その真剣な言葉をやり取りに、私は目を細めて見守るばかりだった。