少年の心

1978年12月、開館したばかりの県立美術館で初めての県美術展覧会が行われた。センスや情熱の限りを尽くす作品主義に立ちかえり、厳選主義を貫いて、若手作家の登竜門的性格を持ちながら、作家同士が競い合い向上する公募展を目指して運営される。まだまだ世の中の価値観が四角四面の時代。新しい創造で風穴をあけようと意気込んでいた

当時、このたびの県美展で大賞に輝いた井岡義朋さんは30代半ばでデザインの仕事をする傍らで創作活動も展開していた。具体的にどんな感じだったのかは知らないけど、おそらく理想と現実のギャップに苦しみながらも、いつかチャンスを掴むことを信じて生きていたはず。ハングリー精神を熱く燃やして、創作活動していたことは間違いない。

そんな美大入学した時から数えると60年超にわたって美術と向き合い、雨が降ろうと槍が降ろうとこつこつと続けて、81歳で高く評価されるなんて、事実は小説より奇なりとうけどまったくそのとおりだ。持ち前のエネルギーと粘り強さで、ついに栄光の座に登りつめる。ゴッホも驚くほどの情熱の原点は、今も少年の心を持っているからだろう。