余白の美

今年の正月に放映されたNHKスペシャル世界に響く歌 日韓POPS新時代」では、アニメ【推しの子】の主題歌「アイドル」が大ヒットして、様々なヒットチャートにランクインした人気音楽ユニットのYOASOBIも登場する。

「アイドル」のサビのメロディーにヨナ抜き音階(ファとシを弾かない)という和のメロディーラインで、かつて「SUKIYAKI」と呼ばれて、ビルボード・チャート1位に輝いた坂本九が歌う「上を向いて歩こう」にも使われる。私は日本伝統のヨナ抜き音階と、目まぐるしく変化する斬新なサウンドから生まれる独創的な音楽に関心させられた。

先日、県美展で佐々木範子さんの作品「面影に立つ」をじっくりと鑑賞していた時に、そんなことを急に思い出す。いわゆる精霊の宿る木を伝統的な黒と白で描いて、様々な条件を特定させない不思議さを醸し出す。伝えたい感情を少ない感覚だけで表現する着想は、いろんな壁を超えて楽しむことができるはず。だから、自由に物語を想像していける懐の深さがある。余白の美を現代風に活かしている。