而今(にこん)

一昨年の6月、コサカダイキ君の個展期間中に学生さんがひとりで来店する。一見はどこにでもいそうな若者。しかしながら、熱心に作品鑑賞する姿はなかなかのもの。作品を目に焼き付けるというのはこういう所作のことを指す。まだよくわからないけど面白そうである。すぐに声を掛けて話してみると、想像以上のバイタリティさがあった。

それは自分の直感に従って生きていること。実際にやることは簡単そうで難しい。なぜなら、腑に落ちるまで粘り強くやって、初めてその直感が正しかったと評価される。ひらめくままに次々やるのは気まぐれで直感ではない。日常の中で急に浮かんだりするイメージをしっかりキャッチできるかどうかだ。一瞬を逃さない鋭敏さの片鱗を感じる。

こうして心の声に従って自分の可能性に挑戦する頑張り屋さんと仲良くなる。まだまだ漠然とした未来図だけど、現時点では何もかもが未知数であるから、それくらいでちょうどいいだろう。そんな若者がずっとこだわったテーマの作品で、初めて応募した県美展に入選する。千里の道の一歩を踏み出す。とにかく今はチャレンジあるのみ。作品タイトルの而今(にこん)のように過去や未来はさておき、今に集中していこう!