先月下旬、都会で美術を勉強している若者から電話がかかってきた。何ごとかと思いながら出てみると、その正体は操作誤りによる間違い電話。しかし、この数日前に彼女のSNSで大学院修了式の模様を見ていたので、タイムリーにお祝いが言えて良かった。偶然とは言え、人生の節目に立ち合えて晴れ晴れしい気分になる。災い転じて福となす。
それにしても相変わらずしなやかな声をしている。まっすぐに素直な心から醸し出されるのだろう。目標にしていたステージには行けなかったけど、しばらくの間は著名な美術家のアシスタントとして、働きながら学ぶことができるから拾う神あり。どんなに苦しくても逃げ出さず、試行錯誤と創意工夫する人に、計り知れない好機がやってくる。
いわゆる美術の世界で活躍する人は、意外とシンプルな思考や感覚で制作している。複雑な手順で滅多やたらに創り出しても、まぐれで出来上がったものばかり。それでは実力を磨いていくことはできない。だからこそ、好きな美術に真正面から向かっていく。思いっきりよくぶつかっていけばいい。やることをやっていれば、あとは自然にまかせればいいのだ。
