今年8月にアスピラートで開催した「やまぐち生まれの4人展」で、出展した佐々木範子さんはキャプション(説明文)に「子どものころ、草花で遊ぶのが好きで、(略)田んぼのれんげ、公園のシロツメクサを使って、冠や首飾り、指輪も作っていました。(略)今は遊ぶこともなくなったけれど、庭の草花がかわいくて、ついつい茂らせてしまってます」という思い出を書き綴っていた。
いわゆる幼少時代に大事なのは、子どもらしさよりその子らしさ。子どもの好きなこと、興味を持ったこと、心地よいと感じることなどによって育まれていく。ただし、それらは偶然によって育まれる。あらかじめ準備したプログラムでそうしようと思っても、思い通りに上手くいくことはないに等しい。
佐々木さんは花好きな母親がどの季節でも庭に花が咲くように手入れしたことで、いつの間にかその場所で目を凝らしたり香りを嗅いだりして草花と親しくなった。そして、この体験が今の創作に活かされている。画家を天職とする人にとって必要不可欠な鋭い観察力が養われた。ささいなことを細かく観察する力が身に付いたのだ。