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いわゆる世間では生まれながらにして、美術表現が上手くできる人のことを天才と呼んでいる。そう、幼少の頃から際立った作品をつくりだし、圧倒的なセンスの良さを持っている人のことだ。ただし、そんな人はいるのかもしれないが、私はそのような人とお目にかかったことがない。そのためこのような話しを聴くと、都市伝説のようなものに感じてしまい、どこか信じることができないのだ。

つまり私がこれまで出会った美術家たちは、上手く創作できないからこそやる気になって、とことん努力を積み重ねて才能を開花させた人がほとんどだからだ。いろいろなことに果敢に挑戦してみて、その中から面白そうなものを選び、さらに深まっていくように創意工夫している。「この世の中、自分よりできる人はいっぱいいる」と覚悟して、ひたすら上手くできなくても辛抱強くやっていく。ああでもない、こうでもない、と不器用にやり続けて、粘っていくうちに活路を見い出していったのだ。

その第一歩は良き師、良き仲間、良き本などに恵まれること。自分一人の力では先天的な才能のみで大したことはできない。良き出会いによって生まれるエネルギーは無限の可能性を掘り起こす。自分では気付かなかった世界に目覚めさせてくれて、思いもよらない化学反応を起こし、隠れている才能を引っぱり出してくれるだろう。そんな出会いによって磨かれていく、後天的な才能を信じている人の方が素敵だと思う。