マイペース!

f:id:gallerynakano:20191119000839j:plain

子どもの頃、家の庭で遊ぶことが楽しかった。それは花の大好きな母親が1年中に何かが咲くように、さまざまな花を手間暇かけて育ていたため、いつも季節の花々と触れ合ったからだ。さらに木の実につられて飛んでくる鳥たちをはじめ、花のまわりで元気よく生きる虫たちから、すくすくと勝手に伸びる雑草に至るまで、とにかく目に入ってくるものは、すべて興味津々になって観察していた。そのおかげで理科の生物だけは得意だった。自分でもそれなりに自信があったのだが、大学で学ぶほどの実力ではないと悟っていた。私のように計算が苦手な人間には理系なんて所詮無理なこと。それよりもっと自分らしい世界へ進みたい。漠然と生きていた高2の春。あれこれと考えては悩んでいたが、ある日、そうだ絵を描くことが私にはあったとひらめいたのだ。

そう言えば、小学時代のマイブームと言えば、いろいろな漫画の1コマを描き写すこと。しかしながら手先が不器用だったため、上手い人のようにきれいなにはできなかった。しかも1つのコマを描くピッチはノロノロで、線はぶれぶれでそっくりにはならない。それでも自分が気に入ったコマをただ描くことが至福の時だった。そう、もしかしたら絵を描いていことが一番いいのかもしれない。早速、画塾に通ってデッサンを学ぶことに。そこでは芸大を出たばかりの画家と出会い、やや理不尽なことを言われながらも、美術へ進みたい気持ちが勝って、とにかく頭をぶつけながら努力していった。その甲斐あって美大へ合格する。彼女の美術の道はこうしてスタートした。

ただし、それからもノロノロ人生は変わらない。美大在学中も卒業後も、就職後も結婚後も出産後も、そして、今現在も同じだ。不器用だから不器用に生きる。1つのことしかできないから、1つのことだけをやっていく。自分は何をやっても人よりもペースが遅いことを隠さず、その個性を活かしてできるようにすればいい。そんな彼女の純粋で自然体な姿はいつも素敵だと思う。どうかそのペースのままでいきましょう!