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2009年の春、大学へ親しい先生から呼ばれて、10人足らずの美術を学ぶ3年生に、一コマだけ講義してみないかと提案される。たった1日だけの90分一本勝負。当時、私の経験してきたことを語るのなら難しくはない。しかしながら講義として実際に学生さんに役立つのかどうかは未知数だ。正直、いろいろ考えてどうしようか迷ったけれど、自分自身の勉強になる機会だと捉えて、果敢に挑戦していくことになった。無茶なことだと言われれば無茶こと。だけど、これまでの経験があるからなんとでもなるはず。それよりも真摯に新しい宿題を取り組むことで、今現在の実力を確かめて課題を見出そう。45歳になってもまだまだ成長したいのなら、プレッシャーがかかることに行くべし。これぞ修業の場と覚悟を決めて全力で頑張ってみることにした。

この年から足掛け10年ほど講義する。その結果はさておき、私にとっては若者との付き合い方を学ぶ貴重な時間になった。いつの時代も若者の個性や発想はそれぞれ違ってくるもの。それを受け入れて尊重しながら、どうしたら良いアドバイスになるのか、やる気が生まれる言葉を探し求めた。それはどんな時も徹底してこだわること。学生に受けそうことに気づいたらメモして、さらに面白くなるように工夫してみる。地道なことを淡々と繰り返す。そして、心掛けとは本当に恐ろしいものだと教えられる。その日その日に小さなことを積み重ねていくと、やがて学生に言いたいことが具体的になってくる。やはりまずは自ら学んでいくこと。人に何かを教えるには事前に学ばないとできない。美術へ打ち込んでいく。講義のためだけではない。常に打ち込んでいけば、人生は豊かに感じられるだろう。そんな大切な基本に気づかせてもらえた。これが生きている!未来を明るく照らすことになる。如何に深く生きるのか。これしかないのだろう。

■HEART2019の関連企画 県美界隈展 『花』、Y氏とともに 2020年2月13日(木)~3月1日(日) 11:00-18:00 火水定休