映す鑑

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美術家は誰しも他者の評価の中で生きている。裏を返せば、どうしても自己評価だと甘くなりやすく、自分では上手くいったと考えていても、観てもらった人たちの評価が低かったら、現実から目をそむけて不満を抱いたりする。自分で自分のことを客観的に捉えるなんて言うけれど、実際にストイックに研鑽を積むことは難しく、自分の自分に対する評価は甘くなるものだ。

だからと言って他人の言葉ばかりを気にし過ぎてはいけない。一番肝心なのは自分らしい価値観を求めていくことだ。創作の美点や欠点を知るために、いろんな人から意見をもらい、それをヒントに独自の視点を持っていくこと。美術作品はどのように受けとめるのかでスケールが大きく変わっていく。個人個人それぞれの見解や見識を知って、自分しかできないイメージが湧いてくるのだ。どう受けとめて、どう活かすのか。正しく自分の姿を映しだす、謙虚な気持ちがターニングポイントになるのだろう。

つまり美術は制作と発表を繰り返している内に、具体的にセンスや良さがわかってくる。辛いものと甘いもののとの交じり合いによって育まれる。創作において自分と他者は五分五分の対等な関係。その人が成長するためには、心を鬼にして鋭い時もあれば、やさしく包み込む時もあっていい。さまざまな批評を化学変化させて、素晴らしい作品にしてやろう。どこまでも真摯に美術に取り組んでいくことで、自然と周囲から力を得ていきましょう!