くもりなき一つの月

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一休禅師の名言に「くもりなき一つの月をもちながら、浮き世の雲に迷ひぬるかな」がある。この言葉は、人は誰でも曇りのない明るい月を心に持ちながら、浮き世のさまざまことに惑わされて、いつしか輝きがなくなるという意味だ。

私はこれまで美術家を目指す若者に同じようなことを何度も見てきた。美術へ真面目に取り組めば組むほど、それに反比例するように元気がなくなって、しまいにはやめてしまう人もいたりする。この主な原因は大きな勘違い。美術は知識や技術などを習得するのではなく、自分の頭で想像する習慣を身に付けること。滅多やたらにいろんなことを学ぶよりも、自分なりに創意工夫していくこと。作品を試行錯誤しながら制作することで、独創的なイメージが出来上がっていくだろう。

このような基本が忘れられている。たしかに美術活動していく上で、土台になるものを習得しなければ、独自の創造力を発展させられない。しかし、それらに頼り切っていると記憶ばかりが鍛えられて、肝心かなめの自分の頭でなんとかする自発性が育たなくなる。まずは自分の足で美術の道を歩いていくこと。自らの力で創造の世界をしっかりと足をつけて歩いていく。つまり、何があっても自分には才能があるのだと信じ、希望の光を燃やして活動することが大切になるのだ。