鍛錬

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創造力とは表現力や技術力などを繰り返し学んで、その人に定着させることで使えるようになった、いわゆる一般的に「ワザ」と呼ばれるものだろう。例えば、夏休みの宿題のために何かを参考に絵を描いたとしても、出来上がったとたんに制作過程のことはあっさりと忘れてしまう。常日頃から熱心にやっていないことは、正にその場限りの付け焼き刃にしかならない。一晩寝たら記憶は飛んで覚えていないもの。

しかし、いつも本気になって美術に取り組んでいる人、長い年月に渡って制作が習慣化している人は、身体にその余韻がいつまでも残るため、一度手にした感覚は深く刻まれていく。自発的に何度も取り組んでいるうちに、身体が勝手に覚えて自然とできるようになる。ことわざで言うのなら「昔取った杵柄」。高齢者など年輩の人が身体は老いても、昔習ったことは覚えているので、若者には負けられないと、まだまだ現役だと強調する際にも用いる。つまり若い時に身に付けた技術や技能は忘れることはないのだ。

一昨日、どちらも絵を描くことが好きな二人がざっくばらんに美術談義をしていた。それぞれのキャリアに差はあるけれど、本物の美術愛があるもの同士は、すぐにフラット関係になって楽しんでいた。美術はちょっとした努力を怠ったたら、そこから崩れて駄目になりやすい。裏を返して言えば、誰でもができることをやり続けること。毎日、平凡な基礎的なことに取り組んだらいい。そういう小さなことができる人は美術も上手くなるし、小さなことが積み重なって大きくなる。二人の会話の真相はわからないが、二人によって生まれた化学反応は、傍から見ていても美しく感じた。お互いに心が通じ合って熱気が誕生した。こつこつやれる人は素敵だ。これからも切磋琢磨していくことを期待する。