非凡さへの挑戦

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先日、こつこつと美術制作に取り組んでいる若者と話す機会があった。年齢は20代前半。日頃は会社勤めをしながら休日などを利用して活動中。たとえ短い時間でも自分のやりたいことへ夢中になれるので活き活きとしている。とは言うものの、まだまだ思いどおりのペースで進んでいない。ひたむきに努力しているのに結果が出ない。それなのにオーラに明るさを感じるのは、「みんながあんなに頑張っているんだから、私ももう少し苦しさに負けずにやっていこう」と、自分を励ましながら前向きに生きているからだ。そのひたむきな姿勢が伝わるから晴れ晴れしい気持ちにさせてくれる。好きなことに粘り強く踏ん張る人は周囲に熱意が伝わっていくのだろう。とても素敵な輝きがまばゆく感じた。

ところで、いわゆる美術の世界には美術のことが好きで、それを一生の仕事にしようと考える人たちが集まってくる。普通の人に比べれば美術に関して高い能力だと言われる人でも、プロを目指している人ばかりの集団に入ってしまえば、急速に目立たない存在になることがある。ほんのちょっとした個性の違いの中に多くの人たちが隙間もないほどぎっしりといるのだ。ただし、スポーツのような雌雄を決するようなせめぎ合いはない。それぞれにそれぞれのふさわしい居場所を求めていくこと。誰でも自分にしかない非凡さがあるから、その長所に目を向けて磨くことが大切になるのだ。このたび話した若者は良い意味で美術への期待感が低くて好感を持った。できそうもないことを夢見るより、自分の中にある非凡さに挑戦しているだけ。自分ならではの良さを知ろうとして制作し続けている。もしかしたら面白くなるのかも。いや、そうなって欲しいと期待して見守りたい。

■ギャラリーナカノ42周年記念展 よにたち、よにたつ 2020年3月14日(土)~29日(日) 11:00-18:00 火水定休 出展者 加藤智子、佐々木範子、難波瑞穂、伴裕子、村上真実