三尺三寸箸

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仏教法話の中にある「三尺三寸箸」。昔、信心深い男が地獄と極楽の見学に出掛けて、どちらの住人も同じように三尺三寸(約1m)の長い箸を使って食事する光景を目にする。最初に行った地獄では、その長い箸を必死に動かして、自分の口へ料理を入れようとするが、いつまでも入らないまま。ついにイライラから怒り出したり、隣の人が箸でつまんだものを奪ったりして、醜い争いが繰り広げられていた。その一方、極楽の住人は長い箸で料理をはさむと、「どうぞ」と言って他の人に差し出して食べさせていた。すると相手の人も「ありがとう」と喜んで、今度はお返しですよと長い箸で料理をつまんでいた。こういうことが繰り返され、みんなで仲良く食事をして楽しんでいた。

つまり、まったく同じ条件であるにも関わらず、こんなにも違った光景が繰り広げられていた。世の中はそこにいる人たちの心の持ち様で、地獄にでも極楽にでもなるということだ。自分さえ良ければいいでは、本物の幸せになることはできない。いずれ一人ぼっちになってしまう。幸せの花は相手と自分との間に咲くから美しい。他人のために生きることによって、自分も幸せになれるという、お釈迦様の教えが「三尺三寸箸」の由来だとされる。

今の日本、いや世界中、本当に大変なことになっている。見えない敵との戦いが続いている。だからこそ、自分でできることを大切にし、それが他者に繋がることを意識しよう。私は大したことはできないけど、私なりに最善を尽くしていきたい。みんなの小さな努力が重なり合うと力強くなっていく。お釈迦様は誕生してすぐに7歩歩いて唱えた「天上天下唯我独尊」。この意味は、この世で私たち人間は尊い存在であり、誰もが仏になれる可能性を持つこと。ちなみに7歩とはこの6つ(六道)の苦しみの世界から1歩出ることを表す。どんな人も生まれた目的は、6つの苦しみを乗り越えて、真の幸福になることができるのだ。この苦難と向き合って頑張っていきましょう!