若さを燃やす

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11年前、初めて出会った頃、「本当に美術でやっていけるのか?」と、自問自答しながら悩んでいた。子どもの頃から絵は大好き。絵は一番の友であって、いつもそばにあった。ずっとずっと楽しくて、ずっとずっと夢中になった。そんな彼女に大きな転機が訪れる。それは美大受験だ。いわゆる美術家を目指す人なら、誰でも目の前に表れる第一関門。ここで大きくつまずいてしまう。美術を学びたい気持ちはあるのに、デッサンや色彩構成など、入試に必要なものを習うことに抵抗があった。「なぜ、これをしなくてはならないのか?」と、腑に落ちないまま時間は過ぎて、芳しくない結果に終わってしまった。

つまり美術に対してうぶだった。真面目で、不器用で、意地っ張りの性分。そのため洗礼を真面に受けて身動きが取れなかった。とにかくよくわからなくて、どうしようもなくて、体当たりしていくだけ。ただただ未熟さと向き合い、悔しさから泣きたい日もあっただろう。それでもそこから逃げ出さなかった。やはり美術を第一にして生きていきたい。たった一歩でも夢へ近づけてみたい。彼女は作品のために悩み、苦しみ、もがくことを肯定していく。美術への純粋さはコンプレックスを味方にし、困難をエネルギーに変化させて、創作意欲を赤々と燃やしていったのだ。

そんな彼女は今、どんどん若さが光っている。たしかに表情は成長したけれど、ハートはピカピカと明るいままだ。天へ向かって勢いよく育った木は、上へばかりにすくすくと伸びていく。そのため肝心の幹が細くて弱くて、強い風が吹くことがあったら、バッサリと折れやすいもの。反対に曲がりながら育った木は、なかなか上へ伸びていかないものの、根と幹が十分に強く太くなるため、やがて巨木に成長していける。つまり可愛い子には旅をさせよ!効率の良く近道を歩むより、手探りで可能性を試していくこと。自分にしかない道にこだわることで道は拓ける。これからも愚直のまま美術と向き合い、独自性の高い世界を創っていくることを期待している。