不思議

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これはいったいどうしてこうなるのか? 一般的な考え方では上手く説明つかないこと、世間一般の常識では推し量れない事柄を「不思議」という。この言葉は仏教用語「不可思議」に由来し、仏や菩薩の神通力や行いのように、言葉によって表現し難い境地を意味する。 転じて、人知の及ばないことを言い表すようになって、平凡な心理状態ではイメージできないことを指す。

どんな時代になっても現世には、私たちの予想をはるかに超えた何かが起きてくるもの。だから自分たちの持つ文明や文化に奢ってはいけない。いつもいろんな視点から世界を見つめて、不思議ことを謙虚な気持ちで受けとめること。これからますます進む合理的で科学的な社会の中で、次々に生まれてくる不思議なものと向かい合い、自分らしく捉えることが大切になる。

ところで、岸透子さんの作品は自宅の庭に咲く花やそこへ訪れるネコたちをモチーフにしている。一見したら、どこにでもあるなんでもない景色ばかり。しかし、彼女がひとたび絵筆を動かすと、凡庸に思えるものが特別なものに感じてしまう。古今東西、同じような絵柄は山のようにあるため、独自性に欠けると揶揄されても仕方ないのに、そこでしか味わえない印象が残っていくのだ。それはモチーフを先入観に囚われず、曇りのない目で向き合っているからだ。どんなものでも自分にとって最高のモチーフにすることができるはず。あらゆる価値観に振り回されなかったら、自分らしい個性を尊重して描けば面白くなるだろう。このまま当たり前の中にある真理を見つけて、観る人に不思議なものを感じさせていこう!